尿をスポーツドリンクに変える浄水バッグとは?
こんにちは。
水とフィルターのプロフェッショナル
家中まるごと浄水器®の小野志郎です。
今日は、尿や泥水からも水を作り出す
新しい技術についてのお話。
「Forward Osmosis Bag (FOB: 正浸透バッグ)」
呼ばれる新しい技術が知られたのは
湾岸戦争の時。
砂漠で水不足になったとき兵士が
自分の尿をこのバッグにかけると
バッグの中にスポーツドリンクが
できて飲めるというもの。
もちろん、泥水の中にもぽいと
投げ入れておけばバッグの中に
スポーツドリンクができちゃう
のです。
通常、海水を浄化するのは、逆浸透膜
という技術を使いますが、こちらは
正浸透。
逆浸透は、電気を使って高い圧力
をかけて水の分子だけを通過させて
真水を作る仕組みですが、正浸透は
電気を使わず、細胞膜のような働き
をする膜を使って、尿や、泥水から
水分のみを移動させることができます。
最初は、軍事で使われた技術ですが、
防災や宇宙開発にも応用できると
期待されています。
実際、NASAでは宇宙ステーションで
このバッグを使って飲料水を作る実験
を行っています。
すでに尿から水を作る技術は確立
され、宇宙ステーションに搭載
されているのですが電気を使うので、
節電が必須の宇宙ステーションでは
電気を使わないこのバッグに注目
しているのです。
NASAのバッグ(処理キット)では、
外側の袋の中にもうひとつ半透性の
袋が入っており、その中に糖分の
入った溶液を注入して使用します。
写真左は、ケネディ宇宙センターの
プロジェクト担当科学者である
ハワード・レビン氏
右の女性は、米Bionetics
Corporation社のエンジニア
モニカ・ソーラー氏
水処理キットでは、糖分のほかに
電解質を豊富に含んだ溶液を
用いて、水分子に半透性の膜を
通過させます。
尿に見えますが、尿ではありません。
テストも尿に近い成分で行っています。
ソーラー氏が、電解質溶液を半透性の
内袋に注入しているところ。
外袋に汚れた液体を入れると、
浸透が起きて、内袋の膜を
ゆっくりと通り抜けて
糖分の入った溶液と混ざり、
あとには汚染物質が残ります。
この二重袋を使うと、スポーツ
ドリンクに似た液体が、4~6時間
で約1リットル作れます。
こちらは実際の宇宙での実験。
この技術が進むと、電気を使わずに
海水を淡水化することができたり
発電にも使えるようになるかも
しれません。
病原菌や、有害物質を含む水も
浄化できるので「緊急浄水器」
「防災用浄水器」としても活躍
が期待されています。
しかし、新しい技術なので日本では
ほとんど認知されていません。
東北大震災の際、アメリカ軍から
この浄水バッグを大量に寄付したいと
日本政府に打診がありましたが、
日本政府は断ってしまいました。
お役人の勘の悪さには驚かされます。
認知には、時間かかると思いますが
防災用品として可能性を感じる技術
のひとつです。
今後の研究テーマに加えたいと思います。
それではまた。